2017巨べらを求めて大沼遠征ココミ編 [大沼]
今日は釣れない・・・、昨日もそうだった。
だから多分今日も釣れない・・・、でも明日も休まず来る、そして明日こそは釣る!。
その日が遂に今日、平成29年5月5日、場所は大沼ユース下ワンド・・・。
釣るよ私!!今日はきっと
「でっで、アタリはどんなだった」「うーんシュッて感じぃ?」「なにそれ、シュッてー、覚えてないの」「いや覚えてるよ。シュッだもん」「・・・」
その日は今回の大沼遠征の最終日となる3日目だった、初日に34をゲットしているとはいえ、2日目はノーへら、ほぼアタリオデコの一日だった。
5・3の初日に34が釣れて2年連続オデコは解消
デビューは果たしたが大沼の40UPを追加しちゃうからねー
この日もだめだったけどねー
新べらクラブJrの最年少にして紅一点の、小学6年生の女の子ココミ。
年頃の女の子だからトイレの心配は常に付きまとう、また体も未だ小さく、腕力に限らず体全体に力が備わっていないのだ。
自身の釣り道具を釣り座まで運ぶことも、見かねた大人たちや、年上の仲間たちが手伝ってなお、“やっと”といった現状がそこに常に横たわっている。
第2回目例会(5・14)での場所移動風景
はっきり言ってバックは引きずってます。
同時期に竿を振り始めた男の子たちは2才年上である、当然のことこの時期の子供の一年は、体躯の極端な差は生じるが、それが2年だ。
兎角、「同性が一人っきりで、しかもその他の釣り仲間はすべて年上」では、孤立は免れない。
そんな精神面の孤立に追い打ちをかけるような、“体躯の差”が、常に釣果の憂き目を見続けさせられる要因になっている。
例会成績も残念ながら未だ低空飛行を続けている、初優勝は未だ、しかも可能性はかなり低いと言わざるを得ないのがもう一つの現状である。
浮かない表情も、ことここに至るまでに何処の釣り場の水面にも写し込み続けてきた。
「今日はお休みかも」毎回の釣行時に待ち受ける側のスギに、不安材料として常に付きまとっていた。 「だとしても仕方がない」ほどに。
「アアカミサマ、お願いです、か、彼女に少しばかりの幸運を」
“我が釣り台の右後方50mほどの距離でそれと戦う彼女”に向けて、ただ唯一の“できること”は“我が釣り台につま先立ちし合掌・・・”、たったそれだけだった。
「あっココミ来てる!!」「おっ掛けた」「掛けたー!!」
彼女の格闘はかろうじて木々の間からチラチラと漏れる彼女の上着のカラフルさ故が、その孤高なる“それ”を極々僅かに伝えてくる。
そのもどかしさたるやは、筆舌になぞ尽せようか、「アアカミサマ」、「無神論者故の平素の無沙汰などここは水に流してごく僅かばかりの幸運を彼女に」と三度目の「ああ神さま」をひたすら呟く・・・。
片手じゃむりー(藤田氏撮影)
イヤー暴れないで―(幅野氏撮影)
そっち行っちゃヤダー(幅野氏撮影)
激闘果てしなく(藤田氏撮影)
ついに遂に、タモを握り、イン寸前(幅野氏撮影)
「入った!!」「入ったの?」「入った!!入った!!!」
孤高のへら女子恋々美の両隣に入っていたアラタと藤田氏の上げた歓声に、4度目の「ああ神様」を、腹の底から安堵の塊ごと押し出した。
「兎に角まずはフラシに入れろ」多分そんな指示を大声でしたはずだが、実はあまりよくは覚えていない。
我に返り無神論者を思い返して、自身の釣り座に座り直したことは覚えている。
ただ、消し去りたき記憶があり、それがココラ辺りの自身の記憶を曖昧にしている、実はこみ上げるものが抑えきれなくなりそうだったからだ。
生来の涙もろさはここのところ齢を重ねては、随分と厚みを増した。
自身の思いとは別に、筋金入りになってきている。
ただ、彼女のこれまでの頑張りに想いを馳せれば、相当の剛の者とてそれを禁じ得ないはずだ。
思えばJr諸君の成長を見守り続けてきた4年の月日は、励ましの歴史でもある。
子供たちは、ほとんどの場合は釣れない。
特に野の釣りだから、大人でも難しい状況はごく普通にあるので、いる意味では当然の結果になることは自明の理なのではある。
そんな時、「大丈夫釣れる釣れる」何とかの一つ覚えの如きに、お題目を繰り返してきた。
そうした励ましに、皆はこれまでよく応えてもくれた。
釣技の目覚ましきは、前年度の尺半祭りでも証明されている・・・、ただ一人ココミを除いてはだが・・・。
「40は確実に超えている」隣りに入って、この遠征で尺半を3枚記録した藤田氏の見立てだ、彼女のそれまでの最長寸の394は超えているであろうことは確実だし、へら鮒釣り人生初も40UPもたぶん間違いないだろう。
ただ、そんな幸運が彼女に何度も訪れるほどへら鮒釣りは甘くはない。
それでも「よし次も頑張れ!!」お題目は欠かせなかった。
午前9時ころだったろうか、風がうなりを上げた。
「撤収ー」、彼女が入った並びに風で押された波が打ち寄せられる。
最早、続行は不可能、というよりも高めに設置してあった釣台ながら、その上を波頭が撫でようかとした波高に、一気に駆け上がった。
自身の釣り座から脱兎で彼女のもとに、岸から3mほど沖き付していた彼女を陸に上げて、即釣り台も陸に、「取り敢えず片付けなさい検寸と写真は後のお楽しみ」。
実は一番お楽しみだったのはそれを指示していたスギ自身だった・・・。
「だから、シュッって」「シュッねー」後片付けに忙しく手を動かす彼女ではあったが、何が起こったのか、何をしでかしたのか、彼女の面差しには一片の欠片の一つも見当たらなかった。
兎にも角にも、そのことが起こったすべての始まりは「シュッ」なのだ・・・。
だから「シュッ」だってぇモー
「2回!!」「2回も」「いやー特に2回目はもうだめだと思ったーらっ、脚を半周したところでなぜかぐるっともとに戻ったんだよねー」どうやら、彼女の格闘中に2度ほど釣り台の下にもぐったとのことを隣りの藤田氏が検寸時にしみじみと伝えてくれた。
「回ったらこの型だもん、行っちゃったよねー」
検寸台に上がったそれは455を、激闘に疲れ果てた尻尾の先で指し示していた。
じつはこの中には借り物を手にしているJrもいるのですが
それは次回のお楽しみにー
「ココミ尺半455だ」取り囲んで、それまでその尻尾の先の示す目盛りに視線が注がれていたココミを覗いたJr全員のそれが、その検寸台の上から一斉に彼女に向け注がれる。
その視線の元は押し並べて笑顔であったが、その視線の先にはただの空隙に似たそれしかなかった。
「キョトン」そんな音が聞こえてきそうな空隙だった。
「ココミおめでとう!!」誰かが潮にしたのだったが、検寸版の周りで何度も何度もそんな声が上がった。
声が発せられたすべからくに共通は、彼女のこれまでの頑張りへの賛辞が含まれていた。
その賛辞が、初めて彼女の空隙のような面差しに、朱に染まった笑顔を届けた。
湧き上がる喜びは、彼女にもそしてJr諸君にも共通のそれとなった瞬間だった。
スギを始めとする大人には「遂にやったか―」とした、達成感と「2回もかー、危なかったんだなー」とする安堵がじわじわと広がっていった。
「アアカミサマ」5度目を、帰りの道中、一人しみじみと愛車のフロントグラスに・・・、「アアカミサマ」6度目をこの原稿を認めながら、呟いている。
おめでとうココミ!! 遂に尺半455ゲットー!!
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